どこまで動かせると大丈夫!? 股関節の動きと標準的な可動域
たとえば、学校の体育の授業などで運動をしているとき、きびきびと活発に動いている人と、そうでない人とでは、明らかにパフォーマンスの違いがわかりますよね。
では、同じ年齢で同じような体力があるはずなのに、そうした動きの違いが見られるのは、どのような理由からだと思いますか?
実は、はつらつとして見える人と、動きがぎくしゃくしている人との違いは、姿勢が良いか、悪いかという問題がとても大きいといわれています。
そして、その姿勢の善し悪しは、身体の“関節”の状態によって大きく左右されます。
とくに『股関節』は、上半身と2本の足をつなぐとても重要な関節で、正しい姿勢の維持に最も深く関わっています。
そこで今回は、ふだん何気なく暮らしている上でなかなか気付きにくい、股関節の役割と、どれくらい動けば良いかの目安となる可動域について解説します。
現代生活では狭まりやすい、股関節の可動域。
股関節は、脊柱を支える骨盤とつながり、全身のバランスを安定させる支点にもなる、"人体の要(かなめ)"といえる関節です。
上半身の体重を左右の2点で支え、脚を動かす役割を果たしており、立つ、座る、歩くといった日常動作のほぼすべてに関係しています。そのため、知らず知らずのうちに酷使されていることが多く、痛めやすいと思われている膝や腰よりも、何倍もの負荷がかかっています。
また、倒れたりしないようバランスを取るために細かに動く関節でもあるため、とくにスポーツをする時には、この股関節の動きがスムーズかどうかによって、パフォーマンスが大きく変わってきます。
しかし、現代社会では、イスやテーブルを使う洋式生活やマイカーを使っての移動など便利になった反面、股関節の可動域を狭めるようなライフスタイルが一般的になってきました。
日頃からイスに座りっぱなしなど、長時間同じ姿勢で過ごすような生活を送っていると、股関節を動かすための筋肉が使われないまま硬直化して、身体全体のバランスが崩れてしまうことがあります。そうなると、腰や膝、肩や首などにある他の関節を使ってバランスを取ろうとして姿勢が悪くなってしまい、結果的に、日常的な動作が困難になるほど悪影響を及ぼすこともあります。
こうしたことからも、股関節の柔軟性を意識して、その可動域を知っておくことは健康管理の上で非常に役立つといえるでしょう。
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股関節の動きに関わる筋肉と、標準的な可動域。
股関節は、太ももの骨(大腿骨)の先端部分にある、単体では人体で最も大きい関節で、通常は骨盤の左右にある臼状のくぼみ(寛骨臼)に収まっています。形状が球状になっているため、脚を、前後左右、斜め、回転など、あらゆる方向に動かせるようになっています。
もちろん他の関節と同様に、股関節も、筋肉が直接つながっている訳ではありません。股関節の動作は、太ももから骨盤につながる筋肉や、腰から太ももの付け根につながる筋肉、お尻の筋肉、骨盤の内側にある見えない筋肉など、20種類以上もの筋肉が、目的に応じて相互に作用し合うことによって動いています。
このように、実にさまざまな動きをする股関節ですが、その動きがスムーズかどうかによって、運動時だけでなく、日常生活にも大きく影響を与えます。
下に、股関節の動きと、それに関係する主な筋肉、そして日常動作として問題のない標準的な可動域の目安をご紹介します。
股関節の動きと、関係する主な筋肉
屈曲(くっきょく)…身体を屈めたり、太ももを前に持ち上げる動き
【主動筋】大腰筋、腸骨筋、縫工筋、大腿直筋、恥骨筋
【可動域の目安】120度
片足の膝を自然に曲げながら、太ももを持ち上げたときの角度。
伸展(しんてん)…身体を反らしたり、太ももを後方へ伸ばす動き
【主動筋】大殿筋、半腱様筋、半膜様筋、大腿二頭筋
【可動域の目安】20度
片足の膝を伸ばしたまま、後ろに上げたときの角度。
外転(がいてん)…太ももを外側へ開く動き
【主動筋】中殿筋、小殿筋、大腿筋膜張筋
【可動域の目安】45度
片足の膝を伸ばしたまま、外側に持ち上げたときの角度。
内転(ないてん)…太ももを内側へ閉じる(左右を交差させる)動き
【主動筋】大内転筋、短内転筋、長内転筋、薄筋、外閉鎖筋
【可動域の目安】20度
片足の膝を伸ばしたまま、内側に持ち上げたときの角度。
外旋(がいせん)…太ももを外側にひねる動き
【主動筋】梨状筋、内閉鎖筋、上双子筋、下双子筋、大腿方形筋
【可動域の目安】45度
片足の膝を伸ばしたまま、足首を外側に曲げたときの角度。
内旋(ないせん)…太ももを内側にひねる動き
【主動筋】中殿筋、小殿筋、恥骨筋、薄筋
【可動域の目安】45度
片足の膝を伸ばしたまま、足首を内側に曲げたときの角度。
上記の可動域の目安は、あくまで一般的なものであり、年齢や個人差、生活環境などによって変わります。しかし、スポーツやダンスを行う場合には、上記の目安以上の可動域が求められることも多いでしょう。また、身体全体のバランスが上手く取れているかどうかを確かめるためにも、左右の股関節で可動域に差がないかを知っておくことも大切です。
自分がどのような動きをすると痛みが出たり硬直を感じたりするか、ときどきチェックしてみることをおすすめします。
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